8月 132020
 

私たちが飲んだ1杯のコーヒーが誰かの人生を変える。タイの麻薬製造地帯など貧困地域を極上のコーヒー豆の生産地に生まれ変わらせる日本人男性がいます。世界が注目する「コーヒーハンター」の思いとは。  これは1杯のコーヒーが遠く海を越えて、皆さんに届けられるまでのお話です。タイ最北部・チェンライ。人里離れたこの森の中では、真っ赤に色付いた「ドイトゥン」コーヒーが栽培されています。村人に指導するのは川島良彰さん。川島さんは世界中3000近くのコーヒー農園を巡り、希少なおいしい豆を探し求める姿からコーヒーハンターと呼ばれています。川島さんは世界各地での現地指導などの活動が認められ、「世界が尊敬する日本人100」にも選ばれた人物です。ドイトゥンコーヒーは日本にも輸出されていて、新型コロナウイルスの影響で「おうち時間」が増えたこともあり、日本での売り上げも伸ばしています。  しかし、ここまでの道のりは決して平坦なものではありませんでした。30年前は大地は枯れて一面、茶色の世界でした。その理由は、麻薬“アヘン”の原料となるケシ栽培が行われていたからです。この地帯は、古くから“ゴールデントライアングル”と呼ばれる世界有数の麻薬製造地帯でした。そして、村人の多くは貧困から数世紀にわたってアヘンの製造をなりわいとしていました。  こうした状況にタイでは王室プロジェクトとして、ケシ栽培からコーヒー栽培への転換に乗り出したのです。しかし、素人の村人たちにおいしいコーヒー豆を作ることはできず、そこで救いを求められたのがコーヒーのプロ・川島さんだったのです。世界中を飛び回る忙しい日々の合間を縫って年に数回は現地に通い、一から苗作りを指導、タイの気候に適した新しい品種を取り入れ、少しずつタイ人スタッフからの信頼を得ることができたのでした。そして、いつしかタイのドイトゥンコーヒーは東南アジア有数のコーヒー豆とまで言われ、JALのバンコク-日本便に採用されるまでに認められたのでした。  「生産者と消費者の架け橋になりたい」と語る川島さん。その思いは遠く離れた日本でも、実を結ぼうとしています。日本のおもてなしと伝統ある庭園で知られる八芳園。提供するコーヒーはすべて、川島さんが選んだグアテマラの豆です。グアテマラのコーヒー農園では、貧困にあえぐ先住民族の子どもや労働者のために売り上げを無料の学校や診療所の建設に充てています。そして、川島さんがこの豆を選んだ最大の理由、それは最高品質のコーヒーの味にほれ込んだからです。川島さんは、この農園の豆を国際市場の3倍以上の価格で購入し続けています。そして、話を聞いた八芳園もコストは増えるものの、「よりおいしいコーヒーをお客様に届けたい」との思いから去年9月より全館で採用することを決めました。八芳園内にあるカフェなどの売り上げの一部もまた、グアテマラ現地で無料診療所建設のサポートなどに使われています。  1杯のコーヒーが紡いでいく思い。  コーヒーハンター・川島良彰さん:「かわいそうな人が作ったから買ってあげましょうというのはチャリティーですから。これだけおいしいものを作ったんだから、それだけの価値があるコーヒーだからそれに見合った金額を払う。そのお金を払うことによって、彼らは貧困から脱出することができる。