8月 122014
 
 2014年8月12日  日本, 捏造慰安婦問題, 政治, 韓国

8月5日の朝日新聞は、1面と16~17面を費やして慰安婦問題の特集を組んだ。中でも注目されたのは、彼らが「慰安婦は強制連行された」と主張した根拠である吉田清治の話を「虚偽だと判断し、記事を取り消します」と明確に訂正し、慰安婦が「女子挺身隊」だったという事実誤認も訂正したことだ。

 しかし社としての謝罪はなく、1面では杉浦信之編集担当役員が「慰安婦問題の本質 直視を」という署名記事を書いている。1982年から吉田の嘘を16回も報道しながら訂正しなかった新聞が「本質を直視せよ」という厚顔ぶりにはあきれる。本質を直視すべきなのは、朝日新聞である。
1本の記事が日韓関係を大混乱に陥れた

 2012年の当コラムでも書いたことだが、慰安婦は戦地にはどこにでもいた娼婦に過ぎない。それを日本軍の戦争犯罪に仕立てて世界中に嘘を広め、日韓関係を破壊した朝日新聞の報道は、メディア犯罪として戦後最大と言ってよい。

 朝日新聞の虚偽報道として有名なのは、1950年の伊藤律架空会見記と89年のサンゴ事件だが、実害の大きさは比較にならない。サンゴ事件では当時の一柳東一郎社長が引責辞任したが、今回は大誤報の責任者である植村隆記者が2014年3月に早期退職し、誰も責任を取っていない。

 植村氏は92年1月11日に「慰安所 軍関与示す資料」という記事で「従軍慰安婦」について次のように説明した。

一九三〇年代、中国で日本軍兵士による強姦事件が多発したため、反日感情を抑えるのと性病を防ぐために慰安所を設けた。元軍人や軍医などの証言によると、開設当初から約八割は朝鮮人女性だったといわれる。太平洋戦争に入ると、主として朝鮮人女性を挺身隊の名で強制連行した。

 この記事が「慰安婦の存在」と「軍の関与」と「強制連行」を混同したため、その直後に宮沢喜一首相(当時)が韓国政府に謝罪し、日韓関係が大混乱に陥った。

 特に「女子挺身隊」というのは女性を軍需工場などに動員する制度で、朝鮮半島にはなかったので、明白な事実誤認だ。これは私も含めて多くの人が指摘したが、今回の検証記事でやっと認めた。

 しかし朝日新聞は、これは意図的な捏造ではなく、「研究が足りなかったための混同」だという。本当だろうか。

誤報を認めないで逃げた朝日新聞が混乱を拡大した

 91年8月11日に、植村氏は「女子挺身隊の名で戦場に連行され、日本軍人相手に売春行為を強いられた朝鮮人従軍慰安婦」が名乗り出てきたという記事を書いた。これは韓国メディアより早い「国際的スクープ」だったが、それは彼の義母が慰安婦訴訟を支援する「太平洋戦争被害者遺族会」の幹部だったからだと言われている。

 今回の検証記事は、この点について「元慰安婦の証言のことを聞いた当時のソウル支局長からの連絡で韓国に向かった。義母からの情報提供はなかった」という植村氏の弁解を載せているが、なぜソウル支局長はこの「スクープ」を自分で書かないで、大阪本社の社会部に知らせたのだろうか。

 NHKも同じ頃、慰安婦として名乗り出た金学順の話を放送したが、彼女は「親に売られてキーセン(妓生)になり、養父に連れられて慰安所に行った」と証言した。植村氏にも同じ話をしたはずだが、彼はなぜ「挺身隊の名で連行された」と嘘を書いたのだろうか。

 検証記事によれば、植村氏は「最初はキーセンのことは知らなかった」と弁解しているが、91年12月に金学順が日本政府を相手に訴訟を起こしたとき、キーセンの件は訴状に書かれていたのに、植村氏は翌年1月にまた「強制連行された」と書いた。

 彼は「キーセンだから慰安婦にされても仕方ないというわけではないと考えた」と弁解しているが、これは強制連行の根拠にならない。彼の弁解は不自然であり、それを裏づける証拠もない。元慰安婦の証言と同じだ。

 義母からの情報で「スクープ」を書き、単なる人身売買では大きなニュースにならないので(金学順とは無関係な)強制連行と結びつけたのだろう。これは単なる誤報ではなく、意図的な捏造と言わざるをえない。

 さらに問題なのは、こんな明白な事実誤認を朝日新聞が20年以上、ごまかしてきたことだ。97年3月に慰安婦問題を検証した記事でも、吉田の話は「真偽不明」とし、その後の社説でも、肝心の事実関係をごまかしたまま「強制連行は枝葉の問題だ」などと逃げてきた。

 今回の特集でも、1面では「女性としての尊厳を踏みにじられたことが問題の本質」だとして、ボスニアの強姦事件を引き合いに出しているが、慰安婦は強姦ではない。戦地で頻発する強姦を防ぐために、軍が慰安所を管理したのだ。単なる娼婦を「戦時性犯罪」と呼ぶのはナンセンスである。

 16面の記事では「朝鮮や台湾では、軍による強制連行を直接示す公的文書は見つかっていない」と明記しながら、「自由を奪われた強制性」はあったという。「強制性」とは何か。民間の人身売買でも借金のかたに売られることが多かったので、自由は奪われる。朝日新聞の論理で言えば、政府は吉原の元娼婦にも謝罪する必要がある。

 「他社も強制連行を報じた」と朝日新聞は見苦しい言い訳をしているが、この問題がこじれた原因は、92年の朝日の大誤報で首相が謝罪したことだった。彼らは訪韓の政治的タイミングを狙ったのだろう。「あれは偶然だ」という朝日新聞の弁解を信じる人はいない。

第三者委員会で客観的な調査を

 最初は大した嘘ではなかった。身売りした娼婦の話をちょっと大きくして、1面トップを飾ろうとしただけだ。戦争中のことだから、どうせ証拠は出てこない。紙面を使って義母の運動を支援しよう――植村氏がそう考えてもおかしくない。

 ところが首相が謝罪して韓国が賠償を要求してきたため、騒ぎが大きくなった。この問題の調査結果を発表した93年の河野談話について、検証記事は「各紙は、河野談話は『強制連行』を認めたと報じたが、朝日新聞は『強制連行』を使わなかった」と書いている。

 語るに落ちるとは、このことだ。朝日新聞は、この段階で「強制連行はおかしい」と気づいていたのだ。このとき「あれは誤報でした」と訂正すればよかったのだが、そのタイミングを逃した。

 苦しまぎれに問題を「女性の人権」にすり替えたら、これを国連や海外メディアが取り上げ、「性奴隷」を批判するキャンペーンが2000年代に始まった。ところがこのころ朝日新聞は、慰安婦問題をほとんど報じていない。嘘だと分かっているからだ。大した問題ではないので放置すればそのうち韓国も忘れる、と経営陣は考えたのだろう。

 ところが韓国は、政権が窮地に陥るたびにこの問題を蒸し返し、日韓外交の最大の懸案になってしまった。ここまで大事件になってから嘘を認めると、社長の責任問題になるので、逃げ回っているうちに話はますます大きくなり、朝日新聞の営業や採用にも支障が出てきたと思われる。

 今回、誤報を認めたのは一歩前進だが、いまだに「本質を直視せよ」と開き直っているようでは自浄能力は期待できない。国会に植村氏を招致する話が自民党の石破茂幹事長から出ているが、それがいやなら朝日新聞社が第三者委員会をつくって調査すべきだ。

 STAP細胞の問題では、理化学研究所も早稲田大学も第三者委員会で調査した。労働問題では、ワタミもゼンショーも第三者委員会をつくった。「説明責任」がお得意の新聞社が、まさかこのままほおかむりするつもりではあるまい。